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【株式会社サルーン】「自分がお客さんだったら」を貫く。2代目社長が語る飲食業の本質

2026年06月02日

株式会社サルーン

【株式会社サルーン】「自分がお客さんだったら」を貫く。2代目社長が語る飲食業の本質

◇企業紹介◇

株式会社サルーンは、新潟県を拠点に創業46年を迎える飲食企業です。現在は2代目社長・石丸真太郎氏が事業を承継し、新潟・富山・福井など北陸エリアを中心に27店舗を直営で展開しています。ステーキや鉄板焼きを主力業態とし、正社員・パート・アルバイトを含め約700名以上のスタッフが働く地域密着型の企業です。「自分がお客さんだったらどうして欲しいか」という理念のもと、コロナ禍を乗り越え、DX推進と人材育成の両輪で次世代の飲食業のあり方を模索しています。今回は石丸社長に、料理人から経営者への転身、コロナ禍での決断、そしてこれからの飲食業界への想いを伺いました。取材担当は学生団体GOATの石崎が務めます。

料理人として10年。29歳で決意した「継ぐ」という宿命

石丸真太郎氏が株式会社サルーンに入社したのは29歳のとき。それまでの約10年間は、異なるキャリアを歩んでいました。複数の飲食店で料理人として腕を磨き、調理場に立ち続ける日々。経営や管理といった仕事とは無縁の、純粋な「職人」としての時間でした。

「ずっと料理畑で、こういった管理仕事というものはなくて、本当に料理人としていくつか飲食店を転々としていました」と石丸社長は当時を振り返ります。父親が創業した会社を継ぐことは頭の片隅にありながらも、まずは自分の技術を磨くことに専念していたのです。

しかし、29歳という節目で転機が訪れます。家業に戻る決断をしたとき、石丸社長の心にあったのは「プレッシャー」ではなく「宿命」という言葉でした。

「どちらかというとあまりプレッシャーとか負担に感じるというよりは、やはり宿命というか。会社に入った時点でそういうものを背負っているものと認識していたので、逆に言うとそこまで大きく考えたことがない」

この言葉には、2代目経営者としての覚悟が凝縮されています。迷いや葛藤を語るのではなく、「継ぐこと」を自然な流れとして受け入れ、前に進む姿勢。それは料理人として培った「目の前のことに全力を尽くす」という職人気質が、経営者としての土台を作っていたのかもしれません。

入社後、石丸社長は一般社員からスタートし、店舗管理、複数店舗の統括、エリアマネージャー、そして本社での幹部職へと着実にステップアップしていきました。約17年間かけて会社の隅々まで理解を深め、2022年に社長に就任。46年の歴史を受け継ぎながら新たな挑戦を続けています。

◾ 取材担当:石崎の感想

「宿命」という言葉を迷いなく口にされた石丸社長の姿が印象的でした。その背景には、料理人として10年間現場で鍛えられた精神力があるのだと感じました。就活生の皆さんにとって「覚悟を決める」とは何かを考えるきっかけになる言葉だと思います。どんな選択をしても、その道を「宿命」として受け入れる強さが、キャリアを切り拓く原動力になるのではないでしょうか。

「自分がお客さんだったら」コロナ禍を乗り越えた経営哲学

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大は飲食業界に未曾有の危機をもたらしました。緊急事態宣言、時短営業要請、感染対策の徹底。これまでの「当たり前」が次々と覆される中、株式会社サルーンはどのようにこの試練を乗り越えたのでしょうか。

「2020年になった直後、実はそんなに急激に影響が直面したわけではなくて」と石丸社長は当時を振り返ります。本格的な影響が出始めたのは半年後。来店客数は3割から4割減少し、2021年に入ると「飲食店が感染拡大の場になる」という報道が相次ぎました。

マスクをしながらの接客、パーテーションの設置、従業員の健康管理、濃厚接触者の把握。対応すべきことは山積みでした。それでも石丸社長が一貫して守り抜いたのは、創業以来の経営理念でした。

自分たちがお客さんだったら。というのがうちの経営方針なのです。常日頃は働いていると客観的な視点が立ちづらくなってくる。だけど、自分が目の前にいるお客さんだったら、スタッフにどうして欲しいかとか、品質の良くない料理が目の前に出てきたら、この料理どう思うか。そういう視線に立って仕事しましょうというのはうちのシンボルでもあるので」

この理念は、コロナ禍という異常事態においても揺らぐことはありませんでした。むしろ、従業員たちは自発的に「私がお客さんだったらこれは嫌だな」という声を上げるようになったといいます。感染対策においても、お客様の立場で考えることで、何を優先すべきかが明確になったのです。

結果として、常連客は危機の中でも来店し続けてくれました。「結局、信頼でしか成り立っていないので。味とかサービスとか雰囲気とかでファンになっていただける。大変な時にも来てくださるということは、信頼をいただいているのかなと感じました」と石丸社長は語ります。

◾ 取材担当:石崎の感想

「自分がお客さんだったら」という視点は、言葉にすると当たり前に聞こえます。しかし、コロナ禍という極限状態でこの理念を貫き、従業員一人ひとりがそれを体現していたという事実に驚きました。マニュアルではなく、理念が浸透しているからこそ、危機のときにも正しい判断ができる。就活でよく聞く「企業理念」が、実際の現場でどう機能しているかを知る貴重な事例だと感じました。入社する企業の理念が、本当に現場で生きているかどうかを見極めることの大切さを学びました。 

「地域で選ばれるお店」に。物価高時代の生存戦略

人口減少、物価高騰、賃金上昇。飲食業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。大手チェーンとの競争も激化する中、中小企業である株式会社サルーンはどのような戦略で生き残りを図るのでしょうか。

「我々は大手さんとは違うので、資本力にも限りがある。どういう風に会社を成長させていこうかというのは、力技だけではダメ。大手さんにない何か価値をどう見出せるかが鍵だと思う」

石丸社長が重視するのは、既存店舗のブラッシュアップです。新規出店による拡大路線ではなく、今ある27店舗の価値を高めることで「地域で選ばれるお店」を目指しています。

物価上昇に伴い、外食にかけるお金の単価は上がっています。しかし、賃金が思うように上がらない中で、外食の頻度を増やせる人は限られています。だからこそ、「どういうシーンでどういう店を使うか」という選択において、選ばれる存在にならなければなりません。

「うちがやっている業態、ステーキという業態においては、晴れの日とかお祝いの日とか、そういうシーンで選んでいただくことが多い。そういう時には『やっぱりサルーンだよね』『あそこだよね』と思ってもらえないと難しい」

株式会社サルーンの主力業態である石焼きステーキや鉄板焼きは、お客様の目の前で調理が完成する独特の魅力があります。しかし、火の通り加減を間違えればリスクにもなります。

しっかりと熱源のことを考慮して調理すれば、すごく熱々で食べられるというプラス効果も大きい。いい方向にお客さんに伝わるように気をつけるべき

サービス面でも、DX化が進む時代だからこそ「人の温かみ」が差別化要因になると石丸社長は考えています。お客様が来店した瞬間の「いらっしゃいませ」という声かけ、笑顔、表情。それがあるかないかで、支払うお金の価値に対する満足度は大きく変わります。

「ファーストアプローチで全然違う。安心感がやっぱり違う。挨拶があるかないかもそうだけど、顔の表情とか笑顔があるかないかでも、この払うお金の価値に対して思うところは違うわけじゃないですか」

◾ 取材担当:石崎の感想

「大手にない価値」を追求するという姿勢は、就活生にとっても参考になる考え方だと思いました。大企業に入ることがゴールではなく、自分にしかできない価値を提供できる場所を選ぶことの大切さ。石丸社長が語る「選ばれるお店」になるための努力は、私たち個人にも当てはまります。物価高の時代、企業も個人も「付加価値」が問われる。その価値をどう作るかを考えるきっかけをいただきました。

学生へのメッセージ:「まずやってみる」が未来を切り拓く

インタビューの終盤、石丸社長に若い世代へのメッセージをお願いしました。返ってきたのは、シンプルながらも力強い言葉でした。

「やっぱり、言われたことをやっているだけではダメなんだということ。自分で考えて行動して、まずやってみるということが第一歩。その先にダメでもダメなりの道のりがあるし、成功すれば成功体験が自信に変わる。まずやってみるという一言じゃないですかね」

創業者である父親も「失敗は成功のもと」とよく言っていたといいます。しかし、それも行動しなければ意味がありません。

「やらないでモジモジしているのが一番成長しない。いろんなことをやることによって自分自身の感情も豊かになるし、いろんな人脈もつくし、ポジティブに考える要素が増えるのではないか。やってみることが自分の未来を切り拓いていく第一歩なのかなと思います

特に20代のうちは、失敗を恐れずに挑戦することが大切だと石丸社長は強調します。「20代の失敗は失敗じゃない」という言葉を信じ、様々な業種に挑戦してみることも勧めています。

「自分は固定観念でこれだと思っていても、意外と全く違うことをやったらそっちに興味を持つこともある。それもやってみないとわからない。会社を運営していても同じですよ。商品を作ったり販売したりしても、やっぱりやってみないとそのいいか悪いか、当たりか外れかわからない。やってみてからなんだよね」

料理人から経営者へ。現場から本社へ。石丸社長自身が様々な挑戦を重ねてきたからこそ、この言葉には重みがあります。迷ったときは、まず一歩を踏み出すこと。その積み重ねが、46年の歴史を持つ企業を次の時代へと導いているのです。

◾ 取材担当:石崎の感想

「まずやってみる」という言葉は、就活中の私たちにとって最も必要なメッセージかもしれません。企業研究をしすぎて動けなくなる、面接が怖くてエントリーを躊躇する。そんな経験は誰にでもあると思います。石丸社長が語るように、失敗してもそこから学びがある。成功すれば自信になる。どちらに転んでも前に進める。そう考えれば、挑戦しない理由はないのだと気づかされました。料理人として現場で鍛えられ、経営者として会社を率いる石丸社長の言葉だからこそ、説得力がありました。この取材を通じて、私自身も「まずやってみる」精神で残りの就活に臨みたいと思います。