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【須田本店】100年続く鶏肉屋4代目が語る「リアルを大切にする経営哲学」

2026年07月15日

株式会社須田本店

【須田本店】100年続く鶏肉屋4代目が語る「リアルを大切にする経営哲学」

千葉県香取市で100年以上の歴史を持つ鶏肉専門店「株式会社須田本店」。創業以来、地域に根ざした商売を続けながら、2004年頃からはネット通販事業を展開し、テレビや各種メディアにも多数取り上げられる人気店へと成長を遂げた。今回は4代目代表取締役の須田健久氏に、学生団体GOATの石嵜がインタビューを実施。100年企業を率いる経営者の哲学、鶏肉業界への想い、そして若者へのメッセージを伺った。

銀座の名店「バードランド」での修行が人生を変えた

須田本店の歴史は、鍋などの金物を販売する店舗から始まった。その傍ら、農家から卵を仕入れて東京の市場に卸すという商売を行い、その後鶏肉も取り扱うようになった。「自分たちで美味しい鳥を育てたい」という想いから養鶏も開始し、店頭での鶏肉販売、惣菜の製造、そして通販事業へと事業を拡大してきた。

須田氏は田舎で商売を営む家の長男として生まれた。周囲からは「いずれは継ぐものだろう」という雰囲気があったものの、両親から「必ず継ぎなさい」と言われたことは一度もなかったという。大学時代は旅行好きだったこともあり、旅行代理店での就職を考えて就職活動をしていた時期もあった。

しかし、人生の転機は就職活動中に訪れた。「当時、東京の阿佐ヶ谷にあったバードランドという焼き鳥屋に食べに行ったら、焼き鳥の世界の可能性をめちゃくちゃ感じてしまって、大学卒業したらそこで修行したいと思いました」と須田氏は当時を振り返る。バードランドは後にミシュランで焼き鳥というジャンルを初めて確立し、星を獲得した名店である。

当時の焼き鳥屋といえば、赤提灯の下でサラリーマンがネクタイを緩めながら上司の愚痴を言いつつ大皿で焼き鳥を頬張るというイメージが一般的だった。しかしバードランドは、ワインを飲みながら高級な雰囲気の中で焼き鳥を楽しむという、全く新しいスタイルを提案していた。その世界観に魅了された須田氏は、就職活動をやめ、大学卒業後にバードランドでの3年間の修行を決意する。

修行を終えた頃、両親が立ち上げた通販事業が少しずつ軌道に乗り始め、やることが増えて睡眠時間も確保できないほど忙しくなっていた。ちょうど3年の修行期間を終えたタイミングと重なり、須田氏は家業に戻ることを決めた。2004年に家業を継ぎ、約10年前に父から代表を引き継いで現在に至る。

◾ 取材担当:石嵜の感想

旅行代理店志望だった大学生が、たった一度の食事体験で人生の方向性を変えたというエピソードに衝撃を受けました。就活中の私たちは「どの業界が安定しているか」「どの会社が有名か」といった基準で選びがちですが、須田社長は「心が動いた瞬間」を見逃さなかった。後にミシュランを取るほどの名店での修行という選択は、当時としては相当な覚悟が必要だったはずです。自分の直感を信じて行動する勇気の大切さを学びました。

テレビ出演は「成功」ではない。その先にあるものを見つめる

須田本店は2004年頃からテレビをはじめとする各種メディアに取り上げられるようになった。しかし須田氏は、メディア露出を「成功」とは捉えていない。「テレビに出たから成功というのはあんまり感じていなくて、テレビに取り上げてくださることはすごくありがたいことだとは思っているんですが、私たちの商売というのはそこから先の方がすごく大事です」と須田氏は語る。

テレビを見たお客様が注文してくれたり、店舗に足を運んでくれたりした時に、「もう一度このお店で買いたい」と思ってもらえるかどうか。それが須田氏にとっての本当の勝負である。「テレビで紹介されたけど、まあこの程度ね」で終わるのか、「美味しかったからテレビ放送されていない時でもまた行ってみよう」と思ってもらえるのか。その差が商売の本質だという。

通販事業が爆発的に成長したわけではないと須田氏は謙遜する。「少しずつ、少しずつお客様が増えていって、少しずつ売上が上がっていった」というのが実態だ。しかし、オンラインショップを始めたことで、自分たちの商品がどういう商品であるかをきちんと説明し、外部に発信できるようになった。その情報をメディアの方々が見つけて取り上げてくれるという流れが生まれたのである。

千葉県香取市は決して人口が多い都市ではないので地元のお客様だけでは限界がある。通販事業によって全国にお客様を抱えられるようになり、現在は通販の売上の方が大きくなっている。しかし通販を始めてまだ約20年。100年以上続く商売の歴史の中では、まだ新しい取り組みに過ぎない。

「地元のお客様にも愛されなければ商売は続けられないと思っているので、地元のお客様も大切にしながら、通販でも売上を作っていくという形です」。この言葉には、100年企業を率いる経営者としての覚悟が込められていた。

◾ 取材担当:石嵜の感想

「テレビに出たから成功」という短絡的な考えを持っていた自分が恥ずかしくなりました。須田社長が大切にしているのは、一時的な話題性ではなく、お客様との長期的な関係構築です。就活でも「内定をもらうこと」がゴールになりがちですが、本当に大切なのはその先。入社してからどんな価値を提供できるか、どんな関係を築けるかという視点を持つべきだと気づかされました。

鶏肉業界の未来を明るくしたい。養鶏家が希望を持てる世界へ

須田本店の事業は多岐にわたる。店舗では鶏肉や唐揚げなどの惣菜をテイクアウトできる「街のお肉屋さん」として営業し、一角にはイートインスペースも設けている。店舗の向かいには鶏肉を解体する工場があり作業を行う。隣接する出荷場では、製品となった商品を全国のお客様に梱包して発送する。すべて自社で行っている。2階には事務所と休憩室があり、通販の事務作業を担っている。従業員は約40名。さらに、採卵用の養鶏も自社で行っており、「なるべく自然に近い環境で育てられるように」という思いで取り組んでいる。

須田氏が描く会社のビジョンは、鶏肉業界全体の発展である。「うちらは鶏肉屋なので、この鶏肉というものをもっともっと好きになってもらいたい」。牛肉や豚肉と比べると安価でどこでも手に入る鶏肉だが、「特別な日にも食べたい」と思ってもらえるような料理やお店が増えていくことを願っている。

日本全国には様々な美味しい鶏がいる。須田氏は自社で育てている鶏肉も美味しいと自負しているが、それだけでなく、各地の鶏肉とその土地の魅力がどんどん広まっていくことで、鶏肉好きな人が増え、消費が増えていくことを期待している。

◾ 取材担当:石嵜の感想

自社の利益だけでなく、業界全体の発展を考える視野の広さに感銘を受けました。「養鶏やっているといいことあるよね」と思える業界にしたいという言葉には、100年企業を率いる経営者としての責任感と使命感が詰まっています。自分の仕事が社会全体にどう貢献できるかという視点は、就職活動でも大切にしたいと思いました。

若者へのメッセージ:自分の考えを持ち、リアルを大切に

「アドバイスなんかするようなあれじゃないですけど、実際自分が若かった頃、上の人に言われて、まあ何言ってんだろうなぐらいにしか思わなかったので」と前置きしながらも、須田氏は現代の若者に向けて大切なメッセージを語ってくれた。

AIをはじめとする便利なツールが溢れる現代において、須田氏が懸念するのは「自分の考えがなくなっていくこと」である。「きちんとリテラシーを持って使えるようになっていかないと、自分の考えというものがどんどんなくなっていってしまうかもしれない」。これは若者へのメッセージというよりも、自分自身がAIを使う中で感じていることだという。

自分の考えをしっかり持った上で、そういうのをきちんと一つのツールとして使っていく。それに依存してしまうということではなくて」。AIはまだ間違った情報を出してくることもある。フェイクニュースも含め、自分が見ていないものが周りで流れてくると「そうなんだ」と信じてしまいがちだ。そういったものに流されない人になってほしいと須田氏は願っている。

そのために大切なのは「リアル」を体験することだ。「結局は情報だけ得ても、実際にそれを体験しているかしていないかってものすごく違う。実際その場に行ってみる、その人に会ってみる、そういったところも大事にしてもらいたい」。須田氏自身もいろんな人に会って「この人、全然ニュースで言ってたことと違うじゃん」と思うことがあるという。実際にその場に行って感じてみることの価値を、須田氏は身をもって知っている。

100年以上続く老舗企業の4代目として、ミシュラン星付き店での修行を経て家業を継いだ須田氏。その経験から紡ぎ出される言葉には、デジタル時代だからこそ大切にすべき「人との繋がり」「リアルな体験」への想いが込められていた。

◾ 取材担当:石嵜の感想

「自分の考えを持つ」という言葉の重みを感じました。私たちZ世代はSNSやAIに囲まれて育ち、情報を得ることには長けています。しかし、その情報を鵜呑みにせず、自分の目で見て、自分の頭で考える力が問われている時代なのだと痛感しました。就活においても、企業の口コミや評判だけでなく、実際に足を運び、社員の方と話してみることの大切さを改めて認識しました。須田社長、貴重なお話をありがとうございました。