◇企業紹介◇
株式会社ワイエムフーズは、昭和53年に新潟県で創業した卵加工品メーカーです。半熟玉子や玉子焼き、オムレツなど、卵を使った加工品を業務用・市販用に製造・販売しています。「日本の卵は世界一」という信念のもと、味にこだわった商品づくりを続け、現在の売上高は約62億円。従業員数は約350名を数えます。今回は代表取締役社長・若月氏に、学生団体GOATの石崎が取材。自社ブランドを確立し、さらに海外展開を進める同社の成長の軌跡と、若者へのメッセージをお聞きしました。

実家の危機に”勝つため”に戻る決意
株式会社ワイエムフーズの歴史は、私の祖父・若月三作の代にまで遡ります。祖父は卵の卸売業を営んでいましたが、卵は価格が決まっており、利益率が非常に薄い商売でした。「卵は割れるリスクがある。割れた卵をどうお金に変えるか」という課題が常につきまとっていたのです。
そこで祖父は、息子である私の父に「割れた卵で加工品を作ってはどうか」と提案しました。当時、父は東京や名古屋で勤めていましたが、この提案がきっかけで地元に戻ることを決意。「若月商店食品加工部」として、玉子焼きやオムレツといった焼き物を中心に製造を始めました。
私自身は大学卒業後、別の就職先が決まっていました。しかし、父から「戻ってきなさい」と言われ、築地の市場で5年間商売を学んだ後、ワイエムフーズに入社しました。当時の売上は10億円にも満たず、そのうち90%以上が下請け。「継承」などという言葉を考える余裕はありませんでした。「継承するというよりも、なんとか仕事を営んでいく方に必死だった」というのが正直なところです。
それでも私は、いつか自分のブランドを売りたいという思いを持ち続けていました。「下請けが9割の会社だけど、いずれ自分のブランドを売ってやる」「大きな会社にしてやる」と、周囲には大ぼらを吹いていたものです。根拠のない自信だけは、人一倍ありました。
◾ 取材担当:石崎の感想
「継承」という言葉が出てこないほど必死だったという若月社長の言葉が印象的でした。華やかな事業承継のストーリーではなく、泥臭く生き残りをかけて戦ってきた現実。就活生として、会社の規模や知名度だけでなく、その会社がどんな苦難を乗り越えてきたのかを知ることの大切さを感じました。困難な状況でも「いつか自分のブランドを」と夢を持ち続けた姿勢は、これから社会に出る私たちにとって大きなヒントになるはずです。

「味で嘘をつきたくない」。愚直な品質追求が下請け脱却を実現
私がワイエムフーズで一貫して大切にしてきたのは、「味だけは絶対に譲らない」という姿勢です。日本の卵は世界一の品質を誇ります。生卵を生食できる国は日本だけ。これは養鶏場がサルモネラ菌を含めた徹底した衛生管理をしているからこそ実現していることです。
せっかく世界一の卵があるのに、その品質を味に活かせなければ意味がありません。「卵に失礼だ」とすら思っています。「食べてみたら美味しいと思ってもらえます。いっぱい売れます。」と正面から言える商品を売る方が、よっぽど気持ちいいじゃないですか。
私は営業を長くやってきたので分かりますが、自信のない商品を売ろうとすると、どうしても嘘が出てしまいます。だからこそ、私が社長になった今は「まずい商品はうちはやらなくていい」という方針を貫いています。美味しい商品だけに囲まれていたい。「ワイエムフーズの商品って、何を食べても美味しいよね」と言われれば、作っている従業員も営業も喜びが違うはずです。
この愚直な品質追求を続けた結果、下請け比率90%超だった売上構成は、今ではほぼ自社ブランド100%に変わりました。売上も62億円へと成長しています。
◾ 取材担当:石崎の感想
「卵に失礼」という表現に、若月社長の卵への愛情と敬意が凝縮されていると感じました。就活においても、自分が心から「いい」と思える商品やサービスを扱う会社を選ぶことの重要性を再認識しました。嘘をつかずに堂々と営業できる環境は、働く人のモチベーションに直結します。数字の成長よりも、その成長を支える「妥協しない姿勢」にこそ注目すべきだと学びました。
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2024年問題を逆手に。全国翌日配送網の構築が成長を加速
売上が一気に伸びたのは、実はここ1〜2年のことです。それまでは上がったり下がったりを繰り返しながら、ギリギリ右肩上がりという程度でした。急成長の要因は大きく2つ。1つは先ほど述べた味の改善を愚直に続けたこと。そしてもう1つが、物流体制を根本から変えたことです。
以前は、今日注文をいただいても、東京なら2日後、北海道なら5〜6日後にしか届けられない状況でした。いくら品質が良くても、「他のメーカーは翌日届くのに、ワイエムフーズは5日後」では勝負になりません。この課題を解決しなければ、会社の成長はないと確信していました。
2024年問題が迫る中、私は営業本部長に「なんとか全国翌日配送の体制を構築してくれ」と依頼しました。何年もかかりましたが、2024年問題の前にギリギリ間に合わせることができました。今では北海道から九州まで、注文翌日に届けられる体制が整っています。
「物流を変えなければどうにもならない」という危機感が、結果として競合他社にはない強みを生み出しました。課題を放置せず、諦めずに取り組み続けたことが、今の成長につながっていると実感しています。
◾ 取材担当:石崎の感想
コロナ禍以降、多くの企業が苦戦を強いられる中での急成長。その裏には「物流」という地味だけれど本質的な課題への取り組みがありました。華やかなマーケティングや新商品開発だけでなく、インフラを整えることの重要性を教えていただきました。就活生として、企業の「見えない強み」に目を向ける視点を持ちたいと思いました。2024年問題を逆にチャンスに変えた発想は、逆境を乗り越えるヒントになります。

若者へのメッセージ:「根拠のない自信」でいい。夢は諦めなければ叶う
就活生の皆さんにお伝えしたいのは、「根拠のない自信」を持ち続けてほしいということです。私が社会人になりたての頃、頭も良くない、お金もない、度胸もない。でも「成功したい」という気持ちだけは持っていました。周囲からは「お前に何があるんだ」「大ぼら吹き」と散々言われましたが、言い続けていたら、少しずつそちらの方向に進んでいきました。
有言実行と言えば堅苦しいですが、夢を語るのはタダです。諦めなければ叶うかもしれないし、諦めたら絶対に叶わない。私の場合、下請け9割の会社で「いつか自分のブランドを売りたい」と言い続けた結果、今では数億円だった売上が62億円になりました。もし「下請けでしょうがない。今のままでいいや」と諦めていたら、今の状況はなかったでしょう。
私はあと5年か10年で引退する身ですが、皆さんにはこれから40年、50年の仕事人生があります。「風呂敷は大きく広げておいた方がいい。すぐには畳まないで、広げたままにしておく方がいい」。これが私からのメッセージです。何の分野であっても構いません。大きな夢を持ち、諦めずに言い続けてください。
◾ 取材担当:石崎の感想
「根拠のない自信」という言葉が、取材を通じて何度も出てきました。普通なら「根拠がない」はネガティブな意味で使われますが、若月社長にとってはそれが原動力でした。1億円が62億円に。この数字の変化を生み出したのは、特別な才能ではなく「諦めなかったこと」。就活で迷った時、自分には何もないと感じた時、この言葉を思い出したいと思います。風呂敷は大きく広げたままにしておく。この感覚を胸に、私も就活に臨みます。