株式会社塚原緑地研究所は、千葉県を拠点に創立40周年を迎えた、緑と公共施設の専門企業です。公園・キャンプ場・ホテル・温泉・道の駅など多彩な公共施設の設計から運営までを一貫して手がけ、全国約200名の社員とともに「緑の力で地域を元気にする」というビジョンを掲げています。今回は、緑の仕事に50年携わってきた塚原社長に、公民連携(PPP)の最前線と、これからの地方インフラを担う若者への期待について伺いました。取材担当は学生団体GOATの石嵜です。

技術者として50年—「日本に残る」と決めた原点
塚原社長が緑の仕事を始めたのは、大学で緑を学んだ直後のことでした。以来50年、一貫して「緑」を専門とする道を歩んできました。会社は創立40周年を迎え、設計事務所として出発した当初から、公共施設の運営・マネジメントへと事業領域を拡大してきました。
かつて日本が元気だった時代、多くの同業者が海外へと活躍の場を求めました。「日本のデザインは優れている」と評価され、仕事を求めて国外へ出る人が後を絶たなかった時期です。しかし塚原社長は、あえて日本に残る決断をしました。「私はそのときに日本に残ると決めて、日本のために仕事するという道を選びました。それは本当に良かったと思っています」と振り返ります。
この選択が、今日の塚原緑地研究所の礎となりました。国内で地道に実績を積み重ね、公園や緑地の設計から運営まで、他に類を見ない総合力を持つ企業へと成長したのです。「決して利益をガチガチに追求しているわけではないけれど、誰かがやらなければならない仕事なのです。それをやることで喜びを感じる、そういう会社です」という言葉には、50年間ブレることなく歩んできた技術者としての矜持が滲みます。
◾ 取材担当:石嵜の感想
「日本に残る」という決断は、当時の状況を考えると決して楽な選択ではなかったはずです。海外で活躍するチャンスを捨ててでも、国内で地道に実績を積み上げる道を選んだ塚原社長の姿勢に、本当のプロフェッショナリズムを感じました。就活においても「流行」や「周囲の動き」に流されず、自分が本当に貢献したい場所を見極めることの大切さを学びました。50年という歳月をかけて築いた信頼は、一朝一夕では得られないものです。

公民連携(PPP)の最前線—行政と民間が手を組む新しい公共
塚原緑地研究所の事業の核となっているのが、指定管理者制度を活用した公民連携(PPP:Public Private Partnership)です。これは、行政が設置した公共施設を民間企業が運営する仕組みで、公園・キャンプ場・ホテル・温泉・道の駅など、同社が手がける施設は多岐にわたります。
「お役所が作った公共施設を民間が運営する。例えば大阪で言えば大阪城公園のような形で、民間に入ってもらって公園を再生させようという取り組みです」と塚原社長は説明します。少子高齢化が進み、地方自治体の財政が厳しさを増す中、従来のように行政だけでインフラを維持することは困難になっています。そこで民間のノウハウと資金を活用し、公共施設の質を高めながら持続可能な運営を実現する——これがPPPの本質です。
同社の強みは、単に施設を運営するだけでなく、設計段階から関わり、運営後も地域と連携してイベントを開催するなど、一貫した「育てる」視点を持っていることにあります。「都市公園法が改正されて、公園の中で商業施設を運営していいということになりました。それで、古くなった公園を民間の力で再生させるという動きが全国で始まっているのです」という言葉の通り、同社は千葉公園でレストラン「ロータス」を運営し、千葉県立柏の葉公園でバーベキュー場、群馬県館林市ではホテル事業を展開するなど、公園の新しい可能性を切り拓いています。
◾ 取材担当:石嵜の感想
公園にレストランやホテルがあるというのは、私たちの世代には当たり前のように感じますが、これは法改正と民間企業の挑戦があってこそ実現したものだと知りました。行政と民間が「対立」ではなく「連携」する時代において、塚原緑地研究所のような企業が果たす役割は非常に大きいと感じます。就活生として「公共」と「民間」の境界線が曖昧になりつつある今、自分がどちらの立場でも貢献できるスキルを身につけたいと強く思いました。

「自分たちの公園」を作る—市民参加型の緑地づくり
塚原緑地研究所が手がける事業のもう一つの柱が、市民参加型の公園づくりです。行政が一方的に作る公園ではなく、地域住民と一緒に設計段階から関わり、完成後も住民が主体となって維持管理する——そんな「育てる公園」の仕組みを全国で展開しています。
千葉県内で手がけた「くろすな台ながぐつ公園」は、道路の渋滞緩和のための新設道路に併設された小さな公園です。「本当に小さな公園ですが、設計の段階から住民のみなさんと一緒に考えました。するとお役所が作った公園じゃないから、自分たちが作った公園だから、俺たちのものだよってみんなで守ってくれるのです」と塚原社長は語ります。
この「協働」の精神は、他の事例にも一貫しています。自然生態観察公園では、設計後に「公園を育てる会議」を立ち上げ、塚原社長自身が会長を務めながら、地域住民とともに公園を守り、学び、楽しむ活動を続けています。URの空き地を市民の力で公園にした事例、幕張海浜公園での社会実験など、「公園を作って、あとは悪く言うと文句を言うだけ、ではなく、自分たちが作ったから自分たちで守ろうという声に変える」という姿勢が、すべての取り組みに通底しています。
野鳥観察施設「飛ぶ」では、指定管理者として運営を引き受けた後、「飛ぶというボランティア団体」を立ち上げ、地域住民が汗を流しながら施設を守る仕組みを作りました。こうした取り組みは、単なる施設運営を超え、地域コミュニティの再生にまで踏み込んでいます。
◾ 取材担当:石嵜の感想
「自分たちが作ったから自分たちで守る」という言葉が、非常に印象的でした。行政主導で作られた施設は、どこか「他人事」になりがちですが、住民参加型で作られた公園は「自分ごと」になる。この違いは、地域の活性化を考える上で本質的なポイントだと感じます。就活生として、単に与えられた仕事をこなすのではなく、周囲を巻き込みながら「自分ごと」として取り組む姿勢を持ちたいと思いました。

台風被害から過去最高へ—館山での逆転劇
塚原緑地研究所の実績の中でも、特に注目すべきは千葉県館山市での事例です。2019年、2度にわたって房総半島を襲った台風は館山市に大きな被害をもたらしました。市内には暴風によって飛散した屋根を覆ったブルーシートが目立ち、停電、通信や交通、給水などのインフラの復旧に時間を要して、市民は長期間にわたった被災生活に耐えていました。
公園の指定管理者となった同社は、被災に苦しんでいる館山市のために傷んだ公園を復旧して、市民の拠り所とすることが最初の仕事でした。さらに、令和2年度はコロナ禍が発生して、公園は閉鎖・休館等に追い込まれました。
このような逆境の中、同社は館山市、館山市民、各種団体と連携してこれらの試練を乗り越えて公園の再生に取り組みました。公園は市民や観光客が戻り、市民生活の場、まちづくりの拠点、観光の目玉としての姿を取り戻しました。地域と連携した取り組みは「全国花のまちづくりコンクール」で優秀賞を受賞するなど、高い評価を得てきました。
落ち込んだ来場者数は回復し、台風被害前を上回る過去最高の集客を達成しました。この成功は、単なる施設運営を超え、地域との信頼関係を築き、困難な状況でも民間の力で課題を解決できることを証明した事例となっています。
神奈川県湘南海岸のキャンプ場では、同社が運営を開始してから利用者数が2倍に増加。「普通キャンプ場は儲からないから行政が補助を出すのですが、ここは補助なしで運営できて、しかも利益の3分の1を自治体に還元しています」という実績は、公民連携の成功モデルとして注目されています。
◾ 取材担当:石嵜渉の感想
台風被害からの復興を、行政の補助を待たずに自らの手で成し遂げたというエピソードに、民間企業ならではの機動力と責任感を感じました。クラウドファンディングという現代的な手法を活用しながらも、根底にあるのは「地域のために」という思い。利益を追求するだけでなく、その利益を地域に還元するという姿勢は、これからの企業のあり方を示していると思います。

学生へのメッセージ—「志を同じくする人と、地域の未来を」
塚原社長は、これからの日本社会において、公共インフラの維持・再生が極めて重要な課題になると指摘します。「少子高齢化が進んで、地方の財政が非常に厳しくなる中で、インフラの維持というのは異常に重要になってきます。昔みたいに自治体や行政だけではできませんから、それを民間の力でやらなければならない。だからその『民』が大事なのです」と語る言葉には、50年の経験に裏打ちされた確信があります。
同社では現在、新卒採用は行っていません。かつて募集をかけた際、北海道から九州まで応募者が殺到し、1人か2人の採用枠に対して何十人もの学生が訪れました。「せっかく交通費をかけて面接に来てくれて、対応できないのがすごく申し訳なくて」という理由から、現在は中途採用を中心としています。しかし、会社は今、40年の節目を迎え、大胆な改革に乗り出そうとしています。
「設計もして、施設を運営して、それをマネジメントまで一貫してできる緑の専門会社は、全国でもそうありません。これから困っている自治体がたくさんあるので、私たちの持っているノウハウをもっと広げていきたい。そのために新しい会社を作って、グループ化しようと考えています」と塚原社長は今後のビジョンを語ります。
「志を同じくする若い方がいれば、ぜひ来てほしい。誰かがやらなければならない仕事をやることで喜びを感じる——そういう思いを持った人と一緒に、地域の未来を作っていきたいのです」という言葉は、単なる採用メッセージではなく、50年間緑の仕事に携わってきた技術者からの、次世代へのバトンタッチです。
◾ 取材担当:石嵜の感想
「誰かがやらなければならない仕事」という言葉が、取材を通じて何度も心に響きました。利益を追求するだけでなく、社会に必要とされる仕事を担う——その覚悟と喜びが、塚原社長の言葉の端々から伝わってきました。就活において「やりたいこと」を探す学生は多いですが、「やらなければならないこと」に目を向けることも、キャリア選択の重要な視点だと感じます。地方創生や公共インフラの維持に関心がある学生にとって、塚原緑地研究所のような企業は、まさに理想的な活躍の場ではないでしょうか。