株式会社新越ワークスは、新潟県燕市に本社を置く金属加工メーカーです。創業以来、業務用厨房機器の製造を主軸に、ラーメン店で使用される「テボ」と呼ばれる麺茹で器具をはじめとした調理道具で業界をリードしてきました。近年ではアウトドア用品ブランドの展開や、環境に配慮したペレットストーブ事業にも進出し、「真に開発できる企業」をコンセプトに掲げています。従業員数約100名、平均年齢の若さが際立つ同社を率いるのは、2022年に32歳で代表取締役に就任した山後佑馬社長です。今回は取材担当の石嵜が、若き経営者の挑戦と哲学に迫りました。

「若いうちに失敗も経験せよ」——32歳での代表就任に込められた先代の想い
新越ワークスは山後社長の祖父が創業し、父である先代が事業を拡大してきた企業です。山後社長は大学卒業後に入社し、現場での経験を積みながら経営を学んできました。そして2022年、32歳という若さで代表取締役に就任します。
「父の考えとしては、時代に合わせてDX化を進めたり、お客様とのコミュニケーションを変えていくには、若いうちから色々やった方が失敗も含めていい機会になるだろうという思いがあったようです」と山後社長は振り返ります。燕三条地域には中小企業が多く、先輩経営者たちからも「早いうちにやった方がいい。若い方が周りの先輩方も色々教えてくださるメリットもある」という後押しがあったといいます。
とはいえ、100名近い従業員の人生を背負う責任は計り知れません。「自分の覚悟が整うかというのはなかなか難しくて、当時は本当に非常に大きなプレッシャーがありました。今でもないわけじゃないですけど、当時はよりすごかったかなと思います」と率直に語ります。
しかし山後社長は、その重圧を「役割の1つ」として捉える姿勢を貫いています。「全部が自分でできるかって言われると、それはできないので、自分の役割としてやることやってる部分に集中するだけかなと。日々勉強しながらという感じです」——この言葉には、若さゆえの謙虚さと、経営者としての覚悟が滲み出ていました。
◾ 取材担当:石嵜の感想
32歳で100名規模の企業を率いるプレッシャーは想像を絶するものがあります。しかし山後社長は「役割の1つ」という言葉で、その重圧を冷静に受け止めていました。就活生の皆さんにとって、自分の役割を明確にし、そこに集中するという姿勢は、どんな仕事においても活かせる考え方ではないでしょうか。完璧を目指すのではなく、自分にできることを全力でやり切る——そんな経営哲学を感じ取りました。

「お客様が何を求めているか」——自分たちの枠を超える開発力の源泉
新越ワークスのホームページには「真に開発できる企業」というキャッチフレーズが掲げられています。この言葉には、山後社長の経営哲学が凝縮されています。
「どの事業にしても、やっぱりお客様が何を求めているかというところに向き合い続けないといけない。自分たち本位だったり、自分たちができること、できないことで線を引いてしまったりすると、どうしても世の中の変化についていけなくなります」と山後社長は語ります。
具体例として挙げたのは飲食業界の変化です。「例えば外食にしても昔と比べて今って人手が足りなくて、飲食店さんはそれが結構大きな課題になっています。そうすると求められる道具も昔と今ではちょっと違って、より効率に寄与するような道具が欲しいと求められていたりします」。この変化に応えるには、既存の技術や素材の枠にとらわれない柔軟さが必要だと山後社長は考えています。
「今の僕らの持ってる能力で作れるもの、できることの枠の中だけだと多分限界。だから、お客さんはこういうものが欲しいというところに、じゃあどうやったら答えられるかを、自分たちの力だけじゃなくて周りの協力企業さんや外部の力も借りながら形にしていく」——この言葉こそが、「真に開発できる企業」の本質です。
山後社長は、電気制御の導入や新素材の活用など、小さくてもチャレンジとなることに積極的に取り組むことで、会社としての「守備範囲」を1つずつ拡大していると語ります。自社の限界を認めながらも、それを言い訳にせず乗り越えていく姿勢が、同社の競争力の源泉となっているのです。
◾ 取材担当:石嵜の感想
「できることの枠の中だけでは限界」という言葉が強く印象に残りました。就活生の多くは「自分に何ができるか」を軸に企業選びをしがちですが、山後社長の考え方は真逆です。お客様の課題を起点に、自分たちの能力を広げていく——この発想は、入社後のキャリア形成においても大きなヒントになるはずです。「今の自分にできること」に固執せず、求められることに応えるために成長し続ける姿勢を学びました。

10年以上続く新卒採用——「社員が知り合いに紹介できる会社」であり続ける
新越ワークスの特徴の1つが、平均年齢の若さです。この背景には、12〜13年前から本格的に始めた新卒採用への取り組みがあります。
「それ以前は中途採用がメインだったんですけど、その頃からインターンシップの受け入れや、高校生の職場見学を一生懸命やり始めました。それをきっかけに大卒もしくは高卒新卒の採用が本格的に始まったんです」と山後社長は説明します。多い年には高校生・大学生合わせて7名を採用し、この10年ほどで20代の社員が会社の層として厚くなりました。
注目すべきは、マイナビやリクナビといった大手就活サイトを使わず、インターンシップを通じて会社を知ってもらう採用スタイルです。「特に大学生に関してはやっぱりインターンシップ等で会社を1度でも見られた方の入社が多いです」。この方法により、入社前に会社の実態を理解した人材が集まり、ミスマッチの防止にもつながっています。
さらに山後社長が嬉しく感じているのは、社員からの紹介で入社するケースが増えていることです。「今働いてくれている社員が、知り合いに『うちの会社いいよ』と言える会社でまずはあり続けて、そういうご縁で会社に来て仲間に入ってくださることがあれば、それはすごい嬉しいなと思います」。
「新卒でも先輩の知り合いが入社するケースがあったりする。そういう風に会社に興味を持ってくれるんだったら、それはそれですごい嬉しいですし、ミスマッチも減るのかもしれません」——社員が自信を持って紹介できる会社づくりこそが、採用における最大の武器だと山後社長は確信しています。
◾ 取材担当:石嵜の感想
「社員が知り合いに紹介できる会社」という基準は、就活生が企業を選ぶ際の重要な指標になると感じました。入社してから「この会社を友達に勧められるか?」と自問できる企業こそ、本当に働きがいのある職場なのかもしれません。新越ワークスの社員が自発的に知人を紹介しているという事実は、社内の雰囲気の良さを何よりも雄弁に物語っています。

「なぜ」を考える力——AIを使いこなす時代に求められる本質的思考
山後社長は社内でAIの活用を推進しながらも、その本質的な考え方について明確な考えを持っています。
「会社の中に入るとどうしても自分の役割があって、上司がいて、その上の上司がいて。向くべき方向がちょっとずれてくることが正直あったりします。でも僕らは何のためにいて、するべきことは何なのかというと、やっぱりお客様の期待に答えることです」。この根本的な問いを忘れないことが、山後社長が若手社員に伝え続けているメッセージです。
「言われたことを疑うというか、自分で考えるというか。例えば『こういう風にしてね』と言われた時に、その意味合いとか『なぜか』を捉えて仕事するのがすごい大事かなと思います。AIを使いこなすためにも、本質的なところを考えていく力は1番大事な部分です」
この考えは、AIへの指示の出し方と人間同士のコミュニケーションに共通するものだと山後社長は指摘します。「AIも指示の出し方、聞き方で全然ニュアンスも変わる。これは上司が部下に話す時も同じだと思います」。相手が人間であれAIであれ、本質を理解した上でコミュニケーションを取る力こそが、これからの時代に求められる能力なのです。
◾ 取材担当:石嵜の感想
「AIに使われるのではなく使いこなせ」というメッセージは多くの場所で聞きますが、山後社長の言葉はより具体的でした。「なぜ」を考え、本質を捉える力があってこそ、AIを真に活用できる——この視点は就活生にとって非常に重要です。面接でも、仕事でも、「言われたことをそのままやる」だけでは成長できません。常に「なぜ」を問い続ける姿勢を、今から身につけておきたいと感じました。

学生へのメッセージ——お客様に向き合い続けることが成長の源泉
山後社長は、就活生に向けてこう語りかけます。
「僕自身まだ全然未熟だと思っているので、日々勉強です。でも1つ言えるのは、どの仕事においても『何のためにやっているのか』『誰のためにやっているのか』を考え続けることが大切だということです。会社に入ると、どうしても上司の顔色を見たり、社内の論理に引っ張られたりすることがあります。でも、僕らがいる意味は、お客様の期待に答えることにあるんです」
そして、自分の「できること」に縛られないでほしいとも伝えます。「今の自分にできることだけで線を引いてしまうと、そこで成長は止まってしまいます。お客様や世の中が求めていることに応えるために、自分の能力を広げていく。その積み重ねが、結果的に自分の価値を高めていくのだと思います」
「失敗してもいいから、若いうちに色々なことにチャレンジしてほしい。僕も32歳で代表になって、まだまだ分からないことだらけです。でも、周りの先輩方に教えてもらいながら、1つずつ学んでいます。若さは武器です。その武器を最大限に活かして、どんどん挑戦してください」
◾ 取材担当:石嵜の感想
山後社長は36歳という若さでありながら、経営者としての深い洞察と謙虚さを兼ね備えた方でした。「未熟だから日々勉強」という言葉に嘘はなく、インタビュー中も常に学ぼうとする姿勢が伝わってきました。就活生の皆さんには、「できることの枠を超える」という考え方を心に留めてほしいと思います。自分の可能性を自分で制限しない——新越ワークスの挑戦する文化は、まさにこの言葉を体現していました。