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【株式会社オハラ】「俺のせいじゃない」と思っても、自分のせいだと考えてみる

2026年05月13日

株式会社 オハラ

【株式会社オハラ】「俺のせいじゃない」と思っても、自分のせいだと考えてみる

◇企業紹介◇

株式会社オハラは、1959年に石川県で創業したこんにゃく製造を起点とする食品メーカーです。1978年に法人化し、現在は約63名の従業員を擁しています。こんにゃく製品に加え、パティシエ向けのゼリー製造など幅広い食品事業を展開。かつては中国に工場を持ち、グローバルな事業展開も行っていました。今回は、新卒入社から叩き上げで3代目社長に就任した須田一喜代表取締役に、学生団体GOATの石崎がお話を伺いました。社員から成り上がった経営者だからこそ語れる「働くことの本質」と「成長の秘訣」について、率直なメッセージをお届けします。

茨城出身の学生が、社長になるまで

須田社長は茨城県出身。金沢大学への進学を機に石川県へやってきました。当時は月額700円という破格の学生寮に住み、先輩と8畳の部屋を共有する生活。「プライバシーはゼロ。その代わり、寮長は選挙で選ばれる自治寮で、大学の支配からできるだけ離れて自分たちで全部やる、そんな環境でした」と振り返ります。

文学部に在籍していた須田社長は、1年生の時にわずか12単位しか取得できず、結果的に1年間の留年を経験。「僕が入っていた寮の友達は、ほとんど1年留年している。それがスタンダードでした。ただ、2年留年するやつはいなかった」と笑います。5年目で卒業を決意した時には、就職活動をする時間的余裕がほとんどありませんでした。

就職氷河期と呼ばれた時代。大企業の書類選考では軒並み落とされ、面接に呼ばれても授業との両立が難しい状況でした。そんな中、地元の中小企業合同説明会で出会ったのが株式会社オハラ。「こんにゃく屋なんだけど、パティシエさんのゼリーも作っている。中国に工場があると聞いて、『この会社で俺、中国に行こう』と思って入社試験を受けに行ったら、僕1人しか受けていない。よし、これは受かったと思いましたね」と当時を語ります。

入社後は実際に中国へ赴任。しかし、赴任中に中国工場は閉鎖となり、一度退職して2年後に再びオハラに戻り、そこから社長への道を歩むことになりました。「僕は経営一族の人間ではない。他人承継というやつで、創業者から息子さんへ、そして私へと社長の座を譲られた」のです。

◾ 取材担当:石崎の感想

留年経験や就職氷河期という逆境から、中小企業で社長にまで上り詰めた須田社長のキャリアは、まさに「鶏口となるも牛後となるなかれ」を体現しています。大企業に入ることだけが成功ではないという視点は、就活中の自分にとって新鮮でした。環境を言い訳にせず、目の前の機会を掴む大切さを学びました。

「鶏口となるも牛後となるなかれ」—中小企業で働く覚悟と可能性

須田社長は、中小企業に就職することへの率直な思いを語ってくれました。「自分の中にやっぱり大企業に務めたいというのは、デフォルトで皆さんあるんじゃないかと思う。中小企業に務めるって、勝ち組・負け組という言い方をしたら負け組のグループに入ると思う。今でもそういう考えはあると思います」

しかし、須田社長はある言葉を自分に言い聞かせて入社を決意しました。「『鶏口となるも牛後となるなかれ』という言葉。大きな組織の末端になるより、小さな組織でもトップを目指しなさいという意味です。そういうのを自分に言い聞かせて中小企業に入社したというのはありますね」

実際に須田社長は、入社当時から社長を目指していたのでしょうか。「俺はそんな気は思っていないし、社長する人生なんて思っていなかった。子供の頃から社長になりたいとか思っていたみたいなことは全くない。ただ、やるからにはできるだけ上には行きたいみたいなのはあったのだと思う」と振り返ります。

興味深いエピソードがあります。須田社長の1つ下の後輩社員が、学生時代に会社説明会に参加した際の話。「その子が『僕が説明会に来た時に、須田さんはこの会社で社長になるって言ってましたよ』と言っていた。僕は実際に自分でそう思っているつもりもないのだけど、そういうことを言っていたということは、どこか願望があったのかもしれない」と語ります。

◾ 取材担当:石崎の感想

無意識のうちに社長を目指していたという事実があったことに驚きました。就活では「将来のビジョンを明確に」と言われますが、須田社長のように言葉にしていなくても心の奥底にある志が、行動となって現れることもあるのだと感じます。自分が本当に何を求めているのか、表面的な条件だけでなく、内面と向き合う大切さを教えていただきました。

経営者7年目の実感—「従業員をどれだけ大切にできるか」

事業承継から7年目を迎えた須田社長。経営者として最も大切にしていることを尋ねると、即座に答えが返ってきました。「僕の中ではやっぱり従業員をどれだけ大切にできるか。自分自身が従業員上がりなので、従業員も頑張らなきゃいけない、会社側もちゃんとその頑張りに答えてあげなきゃいけないというところを、どれだけ具現化できるかを考えています」

しかし、須田社長は一方的な関係ではないことを強調します。「お互いに責任はあるのだと言いたい。黙っていれば勝手に会社が大きくなって発展して給料が増えるなんてことはやっぱりない。でも頑張っていても倒産する会社もある。だから両方がやっぱり頑張っていかないといけない」

経営者としての役割について、須田社長はこう定義します。「僕が経営者としてやらなきゃいけないことは、頑張れる場をどう作るかということと、頑張りをどう評価するかということをきちんと作ること」

中小企業の多くには、大企業のような人事評価制度が存在しません。「社長の判断で決まっていくのです。給料が上がる上がらない、役職が上がる上がらないも。『そろそろお前頑張ってるし課長にするか』みたいになる。でも『どうやったら課長になれるのですか』と聞かれたら誰も答えられない。社長を含めて。それが中小企業の現実であり伸びしろです」

◾ 取材担当:石崎の感想

従業員出身だからこそ見える課題と、その解決に向けた取り組み。評価制度がない中小企業の実態は、就活生にはなかなか見えない部分です。「どうすれば昇進できるか誰も答えられない」という正直な言葉に、中小企業で働くことのリアルを感じました。同時に、その課題を放置せず改善しようとする須田社長の姿勢から、経営者の責任とは何かを考えさせられました。

「俺のせいじゃない」と思っても、自分のせいだと考えてみる

須田社長が若者に伝えたいメッセージ。それは少し耳の痛い話から始まりました。「今、働き方改革というのがあって、本当に僕はこれが日本をダメにしていくと思う」

仕事の本質について、須田社長は明快に語ります。「企業というのは何らかの金銭と交換できるお役立ちを提供する。働く人も自分の持っている能力をお金に変えている。ということは、もらえるお金を増やそうと思ったら能力やお役立ちを増やさなきゃいけない。能力を上げる時に一番手っ取り早いのはやっぱり量なのです。たくさんやる、働く」

ブラック企業と言われることを恐れず、須田社長は続けます。「流行らないかもしれないけど、がむしゃらにいっぱいいろんなことをやった方が、やっぱりより良い人生は歩めるのではないかと思います」

転職を前提とした現代のキャリア観についても言及がありました。「転職してお給料が上がる人というのは、能力が高い人だけです。他は転職しても良くて一緒、もしくは下がると思った方がいい。僕がもう一回大学生ぐらいの年に戻れるなら、最初に中小企業でちょっとブラックぐらいのところで働いて、めちゃくちゃ能力をつけて大企業に転職する

そして最も印象的だったのは、成長するための思考法についての話でした。「人のせいにしている人は絶対成長しない。他責にしちゃうとそこで全てが止まってしまう。俺のせいじゃないと思う気持ちもそれはそれで正解だし、実際あなたのせいじゃないということもある。ただ、自分のせいだと思って考えたらこういう方策が取れたなとか、この態度を改めようかなとつなげていけたら、その人は成長していくのではないかと思います」

◾ 取材担当:石崎の感想

「本気で自分のせいだと全部思えとは言っていない」という前置きがありながらも、他責思考の危険性を率直に語ってくださいました。この言葉は、上から言われると反発してしまうかもしれません。しかし、須田社長自身が従業員として同じ経験をしてきたからこそ、説得力があります。就活でも社会人になってからも、この考え方ができるかどうかで差がつくのだと実感しました。

学生へのメッセージ—「頑張りをどう評価するか」を見極めてほしい

取材の最後に、須田社長から就活生へのメッセージをいただきました。

「2年ほど前、新卒の学生が会社に興味があると言って説明会に来てくれた。4年生の7月で内定がないというので事情を聞いたら、今まで受けたところ全部落ちましたと。入社面接を受けて部長面接は通ったのに、役員面接は辞退しますと言ってきた。理由を聞いたら、『頑張ればお給料が上がると言われても意味が分からない。どうするのかが分からない会社では働けません』と言われた」

須田社長自身、従業員時代に同じ疑問を抱いていました。「僕も従業員の時に、なんで俺給料上がったんだろう、なんで俺役職上がったんだろうと分からなかった。分からない会社って気持ち悪いなと思っていた。だから今、評価制度を作り始めている。ちゃんとできたら、しっかり新卒を取るということをしようと思っている」

就活生へのアドバイスとして、須田社長はこう締めくくりました。「会社を選ぶ時に、頑張りをどう評価してくれるのかを見極めてほしい。大企業か中小企業かという枠組みより、自分の成長を正当に評価してくれる環境かどうか。そして、どんな環境でも『自分のせいだとしたら何ができるか』と考えられる人は、必ず成長していく。入ってきたらやめないでほしいとは思っているけど、やめたくないだけの魅力がある会社を作ることが、経営者の責任だとも思っている。お互いに高め合える関係を築いていきたい」

◾ 取材担当:石崎の感想

「分からない会社は気持ち悪い」という学生の声を真摯に受け止め、評価制度の構築に動いている須田社長。経営者でありながら、かつての従業員としての感覚を忘れていないことが印象的でした。就活では給料や知名度に目が行きがちですが、「頑張りをどう評価してくれるか」という視点は、長く働く上で本当に大切なポイントだと気づかされました。須田社長のような経営者のもとで働けたら、きっと成長できる。そう感じさせてくれる取材でした。