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【株式会社一膳】家族3人から500人へ。「決断で選ぶ」経営者が語る挑戦の軌跡

2026年05月15日

株式会社 一膳

【株式会社一膳】家族3人から500人へ。「決断で選ぶ」経営者が語る挑戦の軌跡

◇企業紹介◇
株式会社一膳は、2000年に石川県金沢市で創業した給食・弁当事業を中心とする企業グループです。代表取締役の越田氏が家族3人で立ち上げた小さな弁当屋から始まり、現在はM&Aを通じてグループ全体で約500名の従業員を擁する企業へと成長しました。産業給食弁当、幼稚園、高齢者施設向け食事サービス、さらには冷凍弁当の製造まで、「人を良くすると書いて食」という理念のもと、地域の食のインフラを支える多角的な事業を展開しています。今回は越田社長に、学生団体GOATがインタビューを実施しました。創業から26年、挑戦を続ける経営者の思いと、若者へのメッセージをお届けします。

独立願望が導いた食の世界への転身

越田社長のキャリアは、最初は同業他社で会社勤めでした。そこで働きながらも、心のどこかに独立への願望を抱いていた越田社長は、途中で異色の選択をしました。

妹も栄養士でメニューも立てられるし、僕自身も独立願望があったので、妹を誘って、嫁さんを巻き添えにしてスタートしたような感じです」

2000年、家族3人での船出。石川県で産業給食弁当を手がける会社として、文字通りゼロからのスタートでした。当時の石川県には、売上1〜3億円規模の弁当業者が10社ほど存在していましたが、越田社長は独自の戦略で市場を切り拓いていきます。

創業から4〜5年後、金沢市においてトップ企業へと成長した一膳。しかし越田社長は、そこで満足することなく、業界全体を見据えた大きな構想を描き始めます。コンビニエンスストアの台頭により、昼食市場での競争が激化していた時代。「同じ業界で喧嘩している場合ではない」という危機感が、次なる挑戦への原動力となりました。

越田社長は県内の弁当業者に連絡を取り、連合体の結成を呼びかけます。「クオリティランチグループ」と名付けられたこの組織は、共同仕入れによるコスト削減、メニューの統一化など、小規模事業者が集まることでスケールメリットを生み出す画期的な取り組みでした。

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

特に印象的だったのは、自社が成長してもなお業界全体を見据える視野の広さです。競合他社と手を組むという発想は、「競争だけが成功への道ではない」という大きな学びになりました。自分の強みを活かしながら、周囲と協力して大きな価値を生み出す。この姿勢は、どんな業界でも通用する考え方だと感じます。

「怖がりだからこそ挑戦する」逆説的な成長戦略の真髄

一膳グループの急成長を支えてきたのは、積極的なM&A戦略です。しかし、その根底にある動機は、意外にも「恐怖心」だと越田社長は語ります。

「これは別に強い意思があったわけではなくて、どちらかというと怖がりなのです。せっかく事業をしました、そこそこうまくいきました。この事業が継続するかと考えた時に、業界自身が斜陽に入ってくることや、やはり日常食は誇りを持ってインフラだと思ってやっているのですが、当時は単価も安くて、夜中から働いて、労働時間も長時間になる業態でした」

人気がない、良い人材が集まらない。この問題を根本から変えたいという思いが、M&Aを通じた業界再編へと繋がっていきます。越田社長はM&Aで会社を託してくれた社長たちに対する責任を強く感じており、「中途半端なことはできない」という覚悟で事業拡大に取り組んできました。

M&A戦略は段階的に進化しています。最初は同業他社を統合する「水平展開型M&A」からスタート。同じ業態の企業を傘下に収めることでスケールを拡大しました。

現在は「コングロマリット型M&A」へと移行。水平展開で獲得した工場や人材を活用し、全く異なる商品製造に切り替えることで、シナジー効果を生み出しながらリスクヘッジも実現しています。具体的には、従来のお弁当工場に真空調理やクックチルの設備を導入し、5日間日持ちする商品を開発。さらに冷凍設備を導入した工場では、昨年FSSC22000という国際基準の認証を取得し、1年間自然解凍で食べられる冷凍弁当の製造も開始しました。

「常温のお弁当からチルド、冷凍へと進化させて、今は6工場あるうちの5工場は土日を休止しています。365日のお客様がいながら、製造の仕方を変えたり工夫したりして、グループ内でシナジーを出すことで実現しました。同じ業界では、おそらく日本でも数少ない会社だと思います」

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

「怖がりだから挑戦する」という逆説的な言葉が強く印象に残りました。普通、挑戦する人は勇敢だと思いがちですが、越田社長は現状維持のリスクを誰よりも理解しているからこそ、積極的に動くのだと感じました。また、M&Aで会社を託してくれた社長たちへの責任感が、単なる事業拡大ではなく「業界を変える」という大きなビジョンに繋がっている点も印象的です。就活においても、「なぜこの会社を選ぶのか」という問いに対して、条件だけでなく、その会社が目指す未来に共感できるかどうかが重要だと改めて感じました。

「10社で10人の社長を作る」

「10の事業で10人の社長を作るというのが今の僕の目標で、残された4年であと3社か4社は作りたい。実は逆算カレンダーでカウントダウンになっていて、毎日1日ずつ日数が減っていく。自分で残りの日を確認しながら戒めながら、日々時間を大切にして計画を立てています」

この目標を実現するために導入されたのが「社内ベンチャー制度」です。これまでトップダウンで越田社長の発想が多かった組織運営から、従業員発のアイデアを事業化する仕組みへと転換を図っています。

実際に成果も出始めています。解凍して食べられる冷凍弁当は、一人の社員の発想から商品化されました。展示会への出展も、従業員からの提案で今年初めて実現。プロパー社員から社長になった人材も既に誕生しており、今年もさらに2人が新たに社長に就任する予定です。

「会社を託された以上、その箱を維持するだけではなく、僕も家族3人の小さな厨房から始めたように、このベースをいかに発展させていくかを考えられる経営者を育てたい。後継者を育てることが半分仕事だと、子会社の社長たちにも言っています」

役員の定年を65歳と設定しているのも、意図的な選択です。世代交代と新陳代謝を繰り返すことで、組織の持続可能性を高めていく。創業者である越田社長自身が、その範を示そうとしています。

「会社の存続が一番大切。優秀な人に託していきたいという気持ちがあります」

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

お話の節々にプロフェッショナルとしての覚悟を感じました。越田社長のように、残された時間を意識しながらも着実に目標に向かって進む姿勢は、就活生にとっても大きな学びです。また、「後継者を育てることが半分仕事」という言葉からは、自分の成功だけでなく次世代への継承を重視する経営哲学が伝わってきました。

「選択」と「決断」の違い。条件で選ばず運命として受け入れる覚悟

就職活動において、多くの学生が給与や福利厚生などの条件を重視します。しかし越田社長は、自身の経験から異なる視点を提示します。

「僕もサラリーマン時代は給与条件とか、賞与はあるのかなとか、そういったところばかり気にしていました。でも条件で入って、会社に言われたことをして給料をもらうという意識だけだと、本当に仕事が面白くなってきませんし、成長もしないと思います」

越田社長が大切にしているのは、「選択」と「決断」の違いです。どちらも選ぶという行為ですが、その本質は全く異なると言います。

「選択とは今までの経験値で選ぶのです。こっちの方が得かな損かなで選んでしまう。やってみて思った通りにいかなかったり、条件がちょっと違うと思ったら、途端で嫌になる。決断は運命だと思って受け入れて、自分が判断したものを決めていくこと。そうすると失敗しても糧になる。やり続けることができるし、成功した時に次へのさらなるモチベーションになる

この考え方は、M&Aの交渉においても実践されています。プラスの会社もあればマイナスの会社もある中で、運命として決断する。後悔しないためには、条件比較ではなく、自分の意思で選び取る覚悟が必要だと越田社長は語ります。

「僕も何回も山を超えて壁にぶつかって、それを超えた時の喜びで、それまでの苦労が一気に吹き飛んで、またやりたいと次の挑戦やりたいという風になる。そうやって自分のモチベーションを保っています」

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

「選択」と「決断」の違いという考え方は、非常に重要な視点だと感じました。条件で選ぶと、少しでも期待と違えば不満に繋がる。しかし運命として決断すれば、困難も成長の過程として受け入れられる。この考え方は、入社後の働き方にも大きく影響すると思います。また、「失敗しても過程になる」という言葉からは、挑戦を恐れずに前に進む勇気をもらいました。

学生へのメッセージ:中身を見て、腹落ちするまで調べて、決断してほしい

最後に、就職活動に臨む学生たちへのメッセージを伺いました。越田社長は、自身の経験と一膳グループの理念を踏まえながら、熱いエールを送ってくれました。

「学生さんは社会人に比べると時間があると思います。その中で、この考え方好きだなとか、この会社は今は小さいけど将来的に可能性があるんじゃないかとかビビッと来て、それで入ってきた人は強い。頑張っていれば給料は最初の条件から変わってくるはずです」

一膳グループが取り組んでいるブランディングも、学生への情報発信を意識したものだと越田社長は語ります。「大学生の就職活動では、「中小企業のどこに魅力があるのか分からない」と感じている学生が多いように思います。 私自身、サラリーマン時代に多くの企業を見てきましたが、実は中小企業にも素晴らしい会社が数多く存在します。 そうした企業の魅力を何とか形にし、学生たちの目に触れるようにしたいと考えています。」

越田社長が最も伝えたいのは、仕事の面白みを感じて挑戦することの大切さです。「やりたいと思うところが決まったら、腹落ちするまで色々調べてください。そしてそれは選択ではなく決断で選んでほしい。特に就職は人生の転機を迎える大事な機会です。学生から社会人になる転換期だと思います」

「面接で条件は出しますが、一番見てほしいのはホームページとか、この会社はどういう風に成長してきているのか、考え方はどうかということ。やりがいを持ってやっていかないと人は続かないし、面白みがなかったら成長もしない」

家族3人から始まり、約500人の従業員を抱えるグループへと成長した一膳。その軌跡は、挑戦と決断の連続でした。越田社長の言葉には、26年間の経営で培われた重みと、次世代への期待が込められています。条件だけでなく、会社の理念や可能性を見極めること。そして、選んだ道を運命として受け入れ、全力で取り組むこと。それが、仕事を通じて成長し、充実した人生を歩むための第一歩なのかもしれません。

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

今回のインタビューを通じて、「中小企業にも素晴らしい会社がたくさんある」という言葉の意味を実感しました。一膳グループは、社内ベンチャー制度や社長輩出の仕組みなど、若者が挑戦できる環境が整っています。越田社長から感じたのは、会社への誇りと次世代への期待。同じ方向を向いているチームの雰囲気が伝わってきました。就活生の皆さんには、ぜひ条件だけでなく、こうした会社の「中身」を見てほしいと思います。そこにこそ、自分が本当に輝ける場所があるかもしれません。