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【株式会社大安】京漬物の老舗が守り続ける「発酵文化」と次世代への想い

2026年05月18日

株式会社大安

【株式会社大安】京漬物の老舗が守り続ける「発酵文化」と次世代への想い

◇企業紹介◇

株式会社大安は、京都府京都市に本社を構える創業100年以上の歴史を持つ京漬物の老舗企業です。「千枚漬」をはじめとする伝統的な京漬物を製造・販売し、日本の発酵食文化を現代に伝え続けています。今回は代表取締役社長・大角安史氏に、京漬物業界の魅力や若い世代に伝えたい想いについてお話を伺いました。取材担当はGOAT学生団体メンバーが務めました。本記事では、伝統産業を守りながら革新を続ける大安の経営哲学と、就活生へのメッセージをお届けします。

百年企業が紡ぐ「京漬物」という文化遺産

株式会社大安は、明治時代から続く京漬物の製造販売企業として、日本の食文化の一端を担ってきました。京都という土地が育んだ独自の漬物文化は、単なる保存食ではなく、四季折々の旬を楽しむ「食の芸術」として発展してきた歴史があります。

大安の看板商品である「千枚漬」は、聖護院かぶらを薄くスライスし、昆布と塩で漬け込むシンプルながらも奥深い製法で作られます。「私たちが作っているのは、ただの漬物ではありません。京都の風土と先人たちの知恵が詰まった『文化』そのものなのです」と大角社長は語ります。

創業から100年以上が経過した現在も、大安は伝統的な製法を守りながら、時代のニーズに合わせた商品開発を続けています。百貨店や直営店での販売に加え、オンラインショップの展開など、販売チャネルの多様化にも積極的に取り組んでいます。

京漬物業界全体が縮小傾向にある中で、大安は「守るべきものは守り、変えるべきものは変える」という姿勢で経営を続けてきました。伝統産業だからこそ、次世代への継承が最も重要な経営課題となっているのです。

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

「文化を作っている」という言葉の重みに、伝統産業の本質を感じました。漬物という身近な食品が、実は京都という土地の歴史や風土を体現しているという視点は新鮮でした。就活において「何を作るか」だけでなく「どんな価値を社会に届けるか」を考える重要性を学びました。百年企業だからこそ持てる長期的な視野は、短期的な成果を求められがちな現代において、むしろ貴重な経営哲学だと感じます。

「変えないこと」と「変えること」の境界線を見極める経営

伝統産業において最も難しいのは、何を守り何を変えるかという判断です。大安では、製法の核となる部分は頑なに守りながらも、パッケージデザインや販売方法については積極的に革新を図ってきました。

「お客様の生活様式は確実に変化しています。核家族化が進み、一度に大量の漬物を消費する機会は減りました。だからこそ、少量パックの開発や、若い世代が手に取りやすいデザインへの刷新が必要でした」と大角社長は説明します。

実際に、近年では20代・30代の顧客層を開拓するため、SNSを活用した情報発信や、洋食との組み合わせを提案するレシピ開発なども行っています。伝統は守るものであると同時に、時代に合わせて「翻訳」するものでもあるという考え方が、大安の経営の根幹にあります。

一方で、発酵という自然の営みに任せる製造工程や、素材の選定基準については一切の妥協を許しません。聖護院かぶらは契約農家から仕入れ、昆布は北海道産の最高級品を使用するなど、原材料へのこだわりは創業時から変わっていません。

「安易にコストダウンを図れば、短期的には利益が出るかもしれません。しかし、それは大安という名前に傷をつけることになります。私たちは百年以上かけて築いてきた信頼を、一瞬の判断で失うわけにはいかないのです」という言葉には、老舗企業としての矜持が感じられました。

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

「変えないこと」と「変えること」の線引きが明確で、その判断基準が「お客様への信頼」にあるという点が印象的でした。就活でも「自分の軸は何か」を問われますが、それは「何があっても変えない価値観」と「柔軟に対応すべき行動」を区別することなのだと気づきました。短期的な利益よりも長期的な信頼を重視する姿勢は、ファストビジネス全盛の現代において、むしろ競争優位性になり得るのだと感じます。企業研究において「何を変えないか」を見ることの重要性を学びました。

発酵食品が持つ「待つ力」と現代社会への問いかけ

漬物作りの本質は「発酵」という自然のプロセスを見守ることにあります。人間がコントロールできない微生物の働きに任せ、最適な環境を整えて「待つ」ことが、美味しい漬物を生み出すのです。

「発酵には時間がかかります。どれだけ技術が進歩しても、この時間を短縮することはできません。私たちの仕事は、自然のリズムに合わせて働くことなのです」と大角社長は語ります。

この「待つ」という姿勢は、効率化やスピードを追求する現代社会において、ある種の問いかけとなっています。すぐに結果を求め、即座に成果を出すことが求められる風潮の中で、発酵食品は「急いでも良いものはできない」という真実を静かに示しています。

大安では、新入社員に対して必ず製造現場での研修を行い、発酵のプロセスを実際に体験させるといいます。「最初は『なぜこんなに待たなければならないのか』と思う若い社員もいます。しかし、実際に漬物ができあがる瞬間を体験すると、その意味がわかるようです」という言葉には、教育に対する深い配慮が感じられました。

発酵食品作りを通じて、社員は「待つことの価値」「自然と協働することの意味」を学んでいきます。これは単なる技術習得ではなく、人としての在り方を問い直す経験でもあるのです。

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

「待つ力」という言葉が心に残りました。就活でも早く内定がほしい、早く結果を出したいと焦ってしまいがちですが、自分の成長にも「発酵」のような時間が必要なのかもしれません。自然のリズムに合わせるという考え方は、SDGsが叫ばれる現代において、むしろ最先端の価値観だと感じました。伝統産業が持つ知恵が、現代社会の課題解決にもつながるという視点は、業界研究の幅を広げてくれる気づきでした。

地域と共に生きる企業としての責任と誇り

京漬物は、京都という土地と切り離して考えることはできません。気候、水、土壌、そして何より地元の農家との関係性が、京漬物の品質を支えています。大安は地域の一員として、農業の担い手不足という課題にも向き合っています。

「聖護院かぶらを栽培してくれる農家が減っています。後継者がいないのです。私たちが良い漬物を作り続けるためには、まず原材料が確保できなければなりません。だからこそ、農業支援にも力を入れています」と大角社長は現状を説明します。

「私たちだけが生き残っても意味がない。サプライチェーン全体が持続可能でなければ、京漬物という文化そのものが途絶えてしまう」という危機感が原動力となっています。

また、京都の観光資源としての京漬物の価値も、大安は重視しています。漬物作り体験の提供など、観光客に京漬物の魅力を伝える活動も積極的に行っています。これは単なる販促活動ではなく、日本の食文化を世界に発信するという使命感に基づいています。

「地方創生」という言葉が叫ばれる以前から、大安は地域と共に歩む企業でした。この姿勢は、これからも変わることはありません。

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

サプライチェーン全体の持続可能性を考えるという視点に、企業の社会的責任の本質を見た気がしました。自社の利益だけでなく、取引先や地域全体の未来を考える姿勢は、まさに「三方よし」の精神です。就活で企業を選ぶ際にも、その会社が社会全体にどんな影響を与えているかを見ることの重要性を感じました。「私たちだけが生き残っても意味がない」という言葉は、利己的になりがちな競争社会への警鐘のようにも聞こえました。

就活生へのメッセージ〜伝統産業で働くということ〜

大角社長に、これから就職活動を迎える学生に向けたメッセージを伺いました。

「就活では、どうしても給与や福利厚生、会社の知名度といった『見える指標』に目が行きがちだと思います。もちろん、それらも大切な要素です。しかし、本当に考えてほしいのは『その仕事を通じて、自分は何を社会に届けられるのか』ということです」

大角社長は続けます。「伝統産業は、派手な成長や急激な変化とは無縁かもしれません。しかし、百年続いてきたということは、百年間ずっと社会に必要とされてきた証拠です。その価値を次の世代に引き継ぐことは、とてもやりがいのある仕事だと私は思っています」

若い世代に対しては、「失敗を恐れないでほしい」というメッセージも語られました。「私たちの業界でも、新しい商品開発で失敗することはあります。しかし、その失敗から学んだことが、次の成功につながるのです。最初から完璧にできる人はいません。大切なのは、挑戦し続ける姿勢です」

最後に、「どんな業界を選ぶにしても、その仕事に誇りを持てるかどうかを基準にしてほしい」という言葉で、取材は締めくくられました。京漬物という日本の文化を守り続ける大安の姿勢からは、仕事を通じて社会に貢献することの尊さが伝わってきました。

◾ 取材担当:学生団体GOATの感想

「百年続いてきたということは、百年間必要とされてきた証拠」という言葉に、伝統産業の価値を再認識しました。就活では新しい産業やベンチャー企業に注目が集まりがちですが、長く続いている企業には「続いてきた理由」があるのです。「仕事に誇りを持てるかどうか」という基準は、シンプルながらも本質的です。給与や知名度という外的な指標だけでなく、自分の内なる価値観と仕事が一致しているかを問うことの大切さを学びました。この取材を通じて、企業選びの視野が確実に広がりました。