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【尾瀬岩鞍リゾート】「スキー場」から「スノーリゾート」へ。3代目が描く雪山の未来

2026年05月18日

株式会社尾瀬岩鞍リゾート

【尾瀬岩鞍リゾート】「スキー場」から「スノーリゾート」へ。3代目が描く雪山の未来

◇企業紹介◇
株式会社尾瀬岩鞍リゾートは、群馬県片品村で創業53年を迎える老舗リゾート企業です。スキー場「ホワイトワールド尾瀬岩鞍」の運営をはじめ、温泉付きホテル「尾瀬岩鞍リゾートホテル」、グリーンシーズンのキャンプ場「尾瀬いわくらキャンプ場」、日帰り温泉施設「Onsen&Lounge MONE-木音の湯-produced by おふろcafé」、さらにはパンの製造販売「いわくらパン工房」まで、多角的な事業を展開しています。全国に約500箇所あるスキー場の中でも、オーナー企業として家族経営を貫く数少ない存在です。今回は3代目代表取締役の星野優一氏に、学生団体GOAT石崎がお話を伺いました。「スキー場」から「スノーリゾート」への変革を掲げる星野氏の経営哲学と、これからの時代を生きる若者へのメッセージをお届けします。

「継ぐ気はずっとあった」30歳までの8年間で得たもの

星野優一氏は、祖父が創業した尾瀬岩鞍リゾートの3代目として生まれました。しかし、大学卒業後すぐに家業に入ったわけではありません。「ちっちゃい時から、いずれは継ぎたいなという気持ちはありました」と星野氏は振り返ります。祖父母の背中を見て育ち、自然とその想いは芽生えていたといいます。

大学卒業後、星野氏が選んだのは意外にも中古車関係の仕事でした。22歳から30歳までの8年間、全く異なる業界で社会人経験を積んだのです。「30までって割り切ってたので、大学卒業してその後の8年間は、ある程度好きなことしたんです」と語る星野氏。父からも母からも「継いでくれ」という言葉は一切なく、自由にキャリアを選べる環境にありました。

この8年間の経験が、後の経営にどう活きているのか。星野氏は「色々経験した方がいいかなっていうのは思うんですよね」と語ります。異業種での経験は、視野を広げ、経営者として必要な多角的な視点を養う土台となりました。30歳という節目で家業に戻る決断をした星野氏。「合う、合わないとかもあるでしょうし、興味のあることに1回飛び込んでみるっていうのは大事かな」という言葉には、自らの経験から得た確信が込められています。

◾ 取材担当:石崎の感想

「継ぐ気はあったけど、30歳まで全く別の仕事をしていた」という星野さんのキャリアに、就活生として大きな学びを得ました。親から押し付けられたわけでもなく、自分の意思で「30歳まで」と区切りをつけて好きなことに挑戦する。その決断力と計画性に驚きました。就活では「将来のために今を犠牲にする」という考えになりがちですが、星野さんは「好きなことをしながらも、いつか家業に戻る」という両立を実現されています。遠回りに見える経験も、経営者としての糧になる。自分のキャリアを焦らず、でも軸は持って選んでいきたいと感じました。

装置産業の厳しさと人の力。代替わりして初めて知った経営のリアル

2022年、コロナ禍がやや落ち着いた頃、星野氏は正式に代表取締役に就任しました。30歳で家業に戻ってから約10年、一般社員としてスキー場やホテルの現場を経験した後の事業承継でした。

「外から見ているのと、実際に中に入ってやるのとでは全く違いました」と星野氏は率直に語ります。スキー場経営は「装置産業」と呼ばれ、リフトやゴンドラといった大型設備に莫大なコストがかかります。日々のメンテナンス、安全点検、そして定期的な更新投資。設備が動かなければ、スキー場としての価値はゼロになってしまうのです。

一方で、ホテル事業は「人」がすべてです。現在、正社員は約30名、冬のピーク時にはアルバイトを含めて150名以上のスタッフが働いています。「働いてくれてる方の生活を守る義務もありますし、責任もある」と星野氏。「事業を継続していくことは、すごく意識してやっていかなきゃいけない」という言葉には、経営者としての覚悟がにじみます。

スキー場とホテル、それぞれ異なる課題を抱えながらも、根底にあるのは「続けること」への強い意志です。創業から53年、3代にわたって受け継がれてきた事業。その重みを背負いながら、星野氏は日々の経営判断を下しています。

◾ 取材担当:石崎の感想

「装置産業」という言葉を初めて知りました。スキー場といえば楽しい思い出ばかりが浮かびますが、その裏側では膨大な設備投資とメンテナンスが必要なのです。リフトが動いて当たり前、それを支える経営の大変さは外からは見えません。さらに150名ものスタッフの生活を守る責任。星野さんが「継続」を最も大切にされている理由が、この話で深く理解できました。華やかに見える観光業の裏側にある地道な努力と責任感を知り、働くことの重さを改めて考えさせられました。

「スキー場」から「スノーリゾート」へ。スキー以外の選択肢を創る挑戦

星野氏が描く未来のビジョンは明確です。「スキー場じゃなくてスノーリゾートっていうか、スキーとかスノーボード以外もできる。そういった施設にしていきたい」と語ります。

この言葉を体現するのが、2024年にリニューアルしたホテル内の新施設です。ホテルの一部を改装し、温泉に入りながら読書やリラックスができるスペースを新設しました。「冬場で言えば、スキーとかスノーボードしない人も一緒に雪山に来て、温泉に入って、本読んだりとか。そういった施設を作ったんです」と星野氏は説明します。

尾瀬岩鞍リゾートの最大の強みは、ゲレンデの中にホテルがあること。場所が離れていないため、スキーを楽しむ人も、温泉でゆっくりしたい人も、同じ場所で過ごせるのです。「世代問わずみんなで一緒に雪山に来れるような、そんな場所ですね」という星野氏の言葉には、家族三世代での旅行や、友人グループでの多様な楽しみ方を想定した戦略が込められています。

◾ 取材担当:石崎の感想

私自身、祖母と旅行に行くときにスキー場は選択肢に入りませんでした。「スキーをしない人は楽しめない」というイメージがあったからです。しかし星野さんの話を聞いて、そのイメージが覆されました。温泉に入りながら読書ができる空間、スキーをしない家族も一緒に雪山を楽しめる環境。これは「体験の多様化」という観光業の新しい方向性を示していると感じます。ただ設備を作るだけでなく、「誰のための施設か」を明確に考えている点が素晴らしいです。

SNSは自分の手で。地道な発信を7年間続ける経営者の覚悟

尾瀬岩鞍リゾートのスキー場Instagram、実は星野氏自身が運営しています。7〜8年かけて数万人のフォロワーを獲得しました。

「個人的なアカウントはそこまでやってないです」と笑う星野氏ですが、SNSを情報発信のメインと位置づけ、業務の一環として継続してきました。「やっぱり情報発信のメインって今はSNSだと思ってるんで、そこは本当に業務の一環として、何かしらネタを探してアップすることはずっと意識してやってきました」と語ります。

若い社員に任せたい気持ちはあるものの、なかなか適任者がいないのが現状です。地方の人材不足という課題を抱えながらも、自らの手で発信を続けています。

しかし、SNSだけでは限界もあると星野氏は認識しています。「ただSNSで発信しただけじゃみんなに知ってもらえないし、どうやったら知ってもらえるかなっていうのは課題だな」と率直に語ります。インバウンド比率は冬のピーク時で約3割。白馬やニセコのような海外での知名度はまだありません。首都圏からのアクセスの良さという地の利を活かしながら、国内外への発信を強化していく方針です。

◾ 取材担当:石崎の感想

経営者自らがSNSを7年以上運営しているという事実に驚きました。多くの経営者は「SNSは若い人に任せる」と言いますが、星野さんは「任せたいけど自分でやる」という姿勢を貫いています。これは単なる人手不足の問題ではなく、情報発信の重要性を経営者自身が理解しているからこその行動だと感じました。「業務の一環」として地道に続ける。これこそが結果を出す秘訣なのだと学びました。就活でも、地道な努力を継続することの大切さを改めて認識しました。

学生へのメッセージ:「興味のあることは、一度飛び込んでみてほしい」

星野氏自身、新卒で入社した会社を離職し、別の業界を経験した上で家業に戻った経験を持ちます。その経験から語られるメッセージは、非常に説得力があります。

「僕も1回は就職して離職した身なので、経験したからこそ言えることかなとは思うんですが、やっぱり色々経験した方がいいかなっていうのは思うんですね」と星野氏は語ります。合う・合わないは実際に飛び込んでみないとわかりません。興味のあることには、まず挑戦してみることが大切だといいます。

一方で、企業側の立場からの視点も忘れません。「会社の代表の立場で言うと、離職されるっていうのは中々しんどいよ」と、採用・育成にかかるコストの重さにも言及します。

「個人の立場と会社の立場で言うのとは別ですけども、1人の先輩として言うんであれば、色々興味持ったことに挑戦チャレンジしてみるってことは非常に大事かな」という星野氏の言葉は、両方の視点を持った上でのアドバイスです。自分のやりたいことに挑戦しながらも、会社への配慮も忘れない。そのバランス感覚が、これからの社会人には求められています。

◾ 取材担当:石崎の感想

「個人の立場」と「会社の立場」、両方の視点からメッセージをいただいたことが印象的でした。就活生はどうしても自分視点になりがちですが、企業側にも採用・育成のコストがかかっているという現実を知ることは重要です。だからこそ、興味のあることに挑戦するにしても、企業への敬意や感謝を忘れてはいけない。星野さん自身が離職経験者だからこそ語れる、リアルで温かいメッセージでした。自分の選択に責任を持ちながら、周囲への配慮も大切にしていきたいと強く感じました。