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【株式会社大商金山牧場】「謙虚であれ」稲盛哲学を胸に地域と共に歩む養豚経営者の挑戦

2026年08月28日

株式会社 大商金山牧場

【株式会社大商金山牧場】「謙虚であれ」稲盛哲学を胸に地域と共に歩む養豚経営者の挑戦

◇企業紹介◇

株式会社大商金山牧場は、1979年(昭和54年)に創業した、山形県酒田市へ本社を置く総合食肉会社です。養豚事業を中心に、ブランド豚「米の娘ぶた®」の生産・販売を手がけ、地域の農業と連携しながら事業を展開しています。今回は、創業者である父から事業を引き継ぎ、17年にわたり社長として経営の最前線に立ってこられた小野木社長にお話を伺いました。取材担当は学生団体GOATの石嵜が務めます。稲盛和夫氏の教えを胸に、地方の中小企業として地域社会との共生を追求し続ける小野木社長の経営哲学と、これからの農業・畜産業の未来について、じっくりとお聞きしました。

疑いなく父の背中を追いかけた青年時代

小野木社長が家業を継ぐことになった経緯は、現代の若者には少し意外に感じられるかもしれません。「当時、昭和の田舎では長男が家を引き継ぐものだという考えが当たり前でした。」と、社長は率直に振り返ります。小学校高学年の頃から、父の仕事を継ぐことが自然な選択として心に刻まれていたのです。

もちろん、若い頃には別の夢もありました。ギター少年だった社長は、音楽で生計を立てられたらという漠然とした憧れを抱いていた時期もあったそうです。「プロ野球選手になりたいという子供の夢と同じようなものでした」と笑いながら語る姿からは、当時の純粋な気持ちが伝わってきます。しかし、社会というものが見えてくるにつれて、その憧れは次第に現実的な選択へと変わっていきました。

「父の姿がかっこよく見えたんです」と社長は語ります。自分の能力次第でいろいろなものを実現できる姿を間近で見てきたからこそ、自然と同じ道を歩もうと決意できたのです。創業者である父の存在は、単なる親という枠を超えて、社長にとってのロールモデルとなっていました。経営者として長年にわたって第一線で活躍してきた今でも、その原点は父の背中にあるのです。

◾ 取材担当:石嵜の感想

現代の就活では「自分らしさ」や「やりたいこと」が重視されがちですが、小野木社長のお話を聞いて、身近な人の姿から学び、その道を選ぶことも立派な選択なのだと感じました。大切なのは、その選択に自分なりの意味を見出せるかどうか。社長が「かっこよく見えた」と言い切れる存在がいたことは、キャリア選択において大きな指針になったのだと思います。就活生の皆さんも、憧れの対象を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。

「謙虚でなければいけない」—稲盛和夫氏から学んだ経営者としての心構え

社長就任から17年、管理職時代から数えると25年以上にわたって経営に携わってきた小野木社長。その長い経験の中で、最も大切にしている価値観を尋ねると、ある人物の名前が挙がりました。京セラ創業者であり、日本を代表する経営者として知られる稲盛和夫氏です。

「盛和塾という勉強会に参加していました。亡くなられてしまいましたが、稲盛塾長の教えは、いろいろな壁にぶつかりながらも王道を歩むには正しいものだと感じています」と社長は語ります。特に心に響いたのは、中国の古典を引用した「ただ謙のみ福を受く」という言葉でした。

「今、社長という立場があるのは当たり前ではない。父がいたから、お客様がいたから、社員さんが働いてくれるから、御輿に乗せてもらっているのだということを忘れてはいけない」という思いを、社長は常に胸に刻んでいます。創業者ではなく、事業を引き継いだ立場だからこそ、周囲への感謝の気持ちを忘れてはならないという謙虚さが、その言葉の端々から伝わってきます。

また、社長はコミュニケーションの重要性についても強調します。現在、社内連絡はチャットが主流となっていますが、社長のもとに直接連絡が来るのは基本的にクレームや問題報告です。「連絡しないことが一番の罪。どうしようもなく起きてしまったことを報告するのは誰だって嫌でしょう。でも、報告しないということは絶対にあってはいけない」と社長は断言します。だからこそ、直接連絡をしてきた社員には必ず感謝の言葉を述べ、現状把握に努めているのです。対話を重視し、ステークホルダーへの感謝を忘れない姿勢が、小野木社長の経営哲学の根幹にあります。

◾ 取材担当:石嵜の感想

「御輿に乗せてもらっている」という表現が印象的でした。社長という立場にありながら、常に周囲への感謝を忘れない姿勢は、まさに「謙虚」という言葉の体現だと感じます。就活生として企業を見る際、リーダーがどのような価値観を持っているかは非常に重要な指標になります。小野木社長のように、トップでありながら「自分一人の力ではない」と言い切れる経営者のもとでは、社員も安心して働けるのではないでしょうか。また、「報告しないことが罪」という考え方は、社会人になってからも大切な心構えとして覚えておきたいと思いました。

「地方の農業、畜産業は成長産業になる」—人口減少時代に見据える未来のビジョン

最後に、会社としての未来のビジョンについて尋ねました。小野木社長の口から語られたのは、単なる自社の成長計画ではなく、日本の地方と農業全体を見据えた壮大な展望でした。

本社のある山形県酒田市は、人口約9万1000人。昨年は自然減で1500名、社会減で300名、合計1800名が減少しました。数年で8万人を切るのではないかという危機感は、酒田市だけでなく、日本の地方全体に共通する課題です。

しかし社長は、視点を変えればそこには「宝の山」があると力強く語ります。「山形県も秋田県も青森県も、食料自給率は100%を超えています。洋上風力発電も進んでいます。エネルギーも食料も、地方にはポテンシャルがあるのです」という言葉には、地方への深い愛着と期待が込められています。

「将来、確実に日本の地方、特に農業に携わる産業は成長産業になるのだと、私は信じています」と社長は断言します。AI の進化によってホワイトカラーの仕事が減っていく中、農業は人の手を必要とする仕事として価値を高めていくでしょう。円安が進めば、海外から食料を買うことも難しくなります。日本人の食を満たすのは、結局日本人自らの手なのです。

また、畜産と農業の連携についても熱く語ります。豚や牛の飼料用に、地域の農地を活用することで、有機堆肥の循環も生まれます。化学肥料の高騰が続く中、地域内で資源を循環させることの重要性は高まる一方です。「自社だけが儲かればいいという発想では、いつか地域から必要とされなくなる。この農場があるおかげで地域も生かされている、そう思ってもらえる存在でありたい」という社長の言葉は、謙虚さと志の高さが同居する、大商金山牧場の経営理念そのものです。

◾ 取材担当:石嵜の感想

「地方の農業は成長産業になる」という言葉に、正直最初は驚きました。しかし、エネルギー問題、食料自給率、AI による雇用変化など、様々な要素を踏まえた社長の論理を聞くと、確かに納得できる部分が多くあります。特に印象的だったのは、「自社だけでなく地域と共に」という視点です。短期的な利益ではなく、50年先、100年先の日本を見据えて種を蒔いている。そんな経営者のもとで働くことの意味を、就活生として深く考えさせられました。地方企業で働くことの価値を、改めて見直すきっかけになりました。

学生へのメッセージ—地域と共に歩む経営者からのエール

取材の最後に、小野木社長から就活生へのメッセージをいただきました。

「今の若い人たちは情報社会のネイティブです。常に情報にアクセスしながら取捨選択できる能力を若いうちから身につけている。昭和世代の我々が偉そうに言えることは実際ないのです」と社長は率直に語ります。その上で、あえてアドバイスするならば、リアルなコミュニケーションを大切にすること、そして理不尽な経験を恐れないことだと言います。

「メンタルは鍛えられます。学生時代に少しでも泥臭い経験をしておけば、社会に出てから必ず役に立つでしょう。そして、地方にも可能性はたくさんあります。人口が減っているからこそ、若い力が必要とされています。私たちは、そんな若い人たちのために、しっかり種を蒔いて土台を作っていきたいと思っています」

謙虚さと情熱を併せ持つ小野木社長の言葉は、これから社会に出ていく就活生にとって、大きな励みとなるのではないでしょうか。地方の中小企業だからこそできること、農業という産業だからこそ描ける未来。そこには、都会の大企業とは違った、確かなやりがいと可能性が広がっています。

◾ 取材担当:石嵜の感想

約1時間のインタビューを終えて、小野木社長の人柄の温かさと、経営者としての芯の強さの両方を感じることができました。「御輿に乗せてもらっている」「謙虚でなければいけない」という言葉の一つ一つに、稲盛哲学を実践してきた重みがありました。そして何より、地方と農業の未来を語る社長の目は、本当に輝いていました。就活において、企業の規模や知名度だけでなく、経営者がどんなビジョンを持っているかを見ることの大切さを、今回の取材で学びました。大商金山牧場のような企業が、日本の食と地方を支えているのです。