◇企業紹介◇
株式会社せいだは、新潟県新発田市に本社を構える創業5代続く農業関連企業です。農家への肥料・農薬などの農業資材販売を起点に、お米の集荷・販売事業、そして農産物直売所「とんとん市場」の運営まで、生産から流通までを一貫して手がける独自のビジネスモデルを展開しています。現在は正社員約47名、パートを含め約70名の体制で、年商55億円規模にまで成長。今回は、専務取締役として経営に携わり、将来の事業承継を見据える清田達也氏(38歳)に、学生団体GOATの取材担当がお話を伺いました。東京での大学生活、留年、留学、サラリーマン経験を経て地元新潟に戻った清田氏が語る「地域と農業の未来」、そして若者へのメッセージをお届けします。

「継ぐ気はなかった」学生時代。実家の危機に”勝つため”に戻る決意
清田氏が株式会社せいだに戻ってきたのは2013年のこと。しかし、大学時代の清田氏には家業を継ぐ意思は全くなかったといいます。「私は大学4年間でほとんど遊んでいましたね」と笑いながら当時を振り返る清田氏。東京の私立大学で英米文学を学んでいた彼は、卒業間際に単位を1つ落とし、留年という壁にぶつかります。
「大変お恥ずかしい話なんですけど、大学の留年の通知が親の元に届くと思っていなくて。めちゃくちゃ怒られると思ったんです」。しかし、父親からの言葉は予想と全く異なるものでした。「お前がもう1回立ち上がるんだったら、何でも応援してやるからまず頑張ってみなさい」。この一言が、清田氏の人生を大きく変えることになります。
その後、中国への留学を経て、大手食品メーカーで2年間営業職を経験。この3年間で、清田氏の中に「地元に帰って家業を継ぐ」という明確な意思が固まっていきました。「留学とサラリーマンの年数を合わせて3年。その間で、もう明確に自分は地元に帰って事業を継ぐんだという意思を固めて、ある程度覚悟して帰ってきました」。
帰ってきた時の会社は売上30億円に満たない規模。しかし清田氏が経営に参画してからの10年余りで、会社は30億円を突破し、前期には年商55億円にまで成長しました。「帰ってきたからには、もっと会社を大きくしたい」。その思いは今も一貫して揺らいでいません。
◾ 取材担当:学生団体GOATの感想
留年という「失敗」を、お父様が全面的に受け止めて「頑張れ」と背中を押した瞬間。この一言がなければ、今の清田氏はいなかったかもしれません。就活では「失敗しない選択」ばかり探してしまいがちですが、むしろ失敗した時にどう立ち上がるか、そして周囲がどう支えてくれるかが大切なのだと感じました。清田氏が「遠回りして良かった」と言い切れるのは、その遠回りの先に確かな成長があったから。私たち就活生も、今の経験が将来どこで繋がるか分からないからこそ、目の前のことに全力で取り組む姿勢を持ちたいと思いました。

「直売所は多店舗展開に向かない」農家と共に歩む成長戦略
清田氏が掲げる数字的な目標は明確です。「この会社を100億円企業に成長させたい」。30億円に満たなかった会社を55億円まで育てた実績がある清田氏だからこそ、この目標には確かな説得力があります。しかし、その道のりは一般的な小売業とは全く異なります。
「スーパーマーケットとかと違って、どんどんドミナント戦略でお店を建てたりシェアを取っていくことが、会社の規模を大きくすることに繋がらないんですよね」。直売所は農家の農産物を預かって販売するビジネスモデル。つまり、農家がいなければ成り立たない事業なのです。
「直売所の多店舗展開というよりは、新潟県内で広く、より多くの農家さんとお付き合いをさせていただいて、肥料農薬のコンサルを通しながら、協力してくれる農家さんを拡大していきたい」。その先に農産物直売所がある——これが清田氏の描く成長戦略です。
現在、株式会社せいだは「とんとん市場」を2店舗展開しています。1店舗は5年前、もう1店舗は2年前に、それぞれ億単位の投資をしてリニューアル。これが清田氏にとって「今までで1番大きい仕事」だったといいます。そして次なる挑戦は、旗艦店である新発田店の更なる拡張工事。「物を売るだけの直売所ではなく、学べる、楽しめる、遊べるという複合施設にしたい」。単なる小売から「コト消費」ができるスポットへ。その構想を実現するため、清田氏は現在、外部のコンサルタントと協力しながら計画を練っています。
◾ 取材担当:学生団体GOATの感想
「多店舗展開が成長に繋がらない」という言葉に、ビジネスモデルの奥深さを感じました。一般的な成長戦略が通用しない業界だからこそ、農家との関係構築という「人」に投資する発想が生まれる。これは就活における企業選びにも通じる視点だと思いました。売上規模や店舗数だけで企業を判断するのではなく、その会社がどんな価値を提供しているか、どんな関係性の上にビジネスが成り立っているかを見ることの大切さを学びました。

「ただの物売りじゃない」食育と体験で若者の心を動かす
株式会社せいだの新卒採用は、現在停滞しています。2023年卒が最後で、それ以降は継続的な採用ができていない状況です。その背景には、小売業・サービス業全体が抱える構造的な課題があります。
「率直に言うと、小売業、サービス業は人気ないですよね」。清田氏は現実を直視しています。2020年卒で採用した2名も、約3年で退職。「土日休みがいい」「もっと休みが欲しい」という声を受け、年間休日数を増やすなどの改善は進めているものの、応募者数自体が少ないという壁は依然として存在します。
しかし、清田氏はこの状況を打破するための明確なビジョンを持っています。「今まで直売所のターゲットは、どちらかというと高齢者の方でした。でも、これからは年齢を下げて20代30代に立ち寄ってもらえるお店になると思っています」。体験農園、食育、カフェレストラン——「買う」だけでなく「学ぶ」「遊ぶ」ができる場所へと進化させる計画です。
「ただの物売りじゃないよと、オンリーワンの会社なんだよというところがきちんと固まってくれば、学生さんの目にも止まってもらえるのかなと思っています」。その準備に今、清田氏はリソースを集中させています。単なる採用活動ではなく、会社そのものの魅力を根本から変える。それが清田氏の考える人材獲得戦略なのです。
◾ 取材担当:学生団体GOATの感想
「人気がない業界だから仕方ない」で終わらせず、会社そのものを変えることで若者を惹きつけようとする姿勢に感銘を受けました。「土日休みがいい」という声に対して、単に休日を増やすだけでなく、「この会社で働きたい」と思わせる本質的な魅力づくりに挑んでいる。就活生として、給与や休日だけでなく「この会社は何を目指しているのか」という視点で企業を見ることの大切さを改めて感じました。

学生へのメッセージ——「全ては伏線。遠回りして良かった」
取材の最後に、清田氏から就活生へのメッセージを伺いました。「私なんかまだ若輩者で、会社の代表にもついていないんですけど」と謙遜しながらも、自身の経験を率直に語ってくださいました。
「全然畑違いの、大学なんて文学部でしたし、全く会社を継ぐ気もなかったんです。でも今考えると、英語が好きだったから英米文学を学んで、それが繋がって中国に留学して。今、中国から直接肥料を輸入しているので、留学していた経験は非常に生きています」。
コロナ禍前には海外出張の機会も多く、様々な国の農業や文化に触れた経験が、今の経営に活きているといいます。そして清田氏は、こう締めくくりました。「結局、全ては伏線だと思うんですよ。ワンピースです。伏線回収に入っていって、結局どこかで繋がってくる。遠回りして私は良かったなと思っています」。
留年という恥ずかしい経験も、遠回りした時間も、全てが今に繋がっている。「これっていうゴールがあるわけじゃないので」という言葉には、まだまだ挑戦を続ける清田氏の姿勢が表れていました。SNSで情報が溢れ、「最短距離」「正解」を求めがちな現代の若者へ。清田氏の言葉は、「まずやってみること」「後から繋がると信じること」の大切さを教えてくれます。
◾ 取材担当:学生団体GOATの感想
「全ては伏線」という言葉が、取材を通じて最も心に残りました。就活では「この選択で合っているのか」「もっと良い道があるのではないか」と迷うことばかりです。でも清田氏の人生を聞いていると、留年も、畑違いの学部選択も、全てが今の経営者としての強みに繋がっている。私たちも、今の経験がいつか「伏線回収」される日を信じて、目の前のことに全力で取り組もうと思いました。新潟で農業と地域の未来を背負う清田氏のこれからの挑戦に、心からエールを送りたいと思います。